この夏、日本の妹が、フェースブックで「姉妹」というコミュニティ・ページを開いてくれました。
 フェースブックに登録した直後は毎日利用して友達や家族と交信していたのに、東部でのカントリー・ライフやガーデニングをエンジョイするために開いたコミュニティ・ページHappyNest in America以外は、たまに写真を掲載したり名前をタグされた時以外あまり使わなくなってしまっていたので、自分のアカウントは閉じようと思っていた矢先だったので、妹が非公開で開設してくれたコミュニティ・ページが嬉しく、最近は日本の家族の様子が掲載されたそのページを頻繁にチェックするようになりました。
 その中では、最近はやりの所謂「女子会」よろしく、家族の様子、お料理の写真、最近訪ねた場所の写真の公開はもちろん、健康や悩みの相談などもして、それぞれに好きなことを書いたり言い合ったりして楽しんでいます。
 
 いつも庭には色とりどりの花を咲かせ、朝からご主人Yくんのために栄養満点の食事作りをし、ピカピカに掃除をして気持ちの良い暮らし作りを実践しているすぐ下の妹Mちゃんが、ある日、「ホームコーディネーターによるこだわり」と題して、彼女の玄関のインテリアを撮影した写真を掲載してくれました。
 アメリカでも、インテリア・コーディネーターという職業がもてはやされており、以前義姉が彼女のコーディネーターが旅行をした際に旅先で見つけて購入してきたというテーブル・ランプを見せてくれたことを思い出し、妹の画像を見た瞬間、日本でも一般家庭に手頃なお値段でサービスするインテリア・コーディネート業が普及してきてMちゃんも誰か雇ったのかな、と思いました。
 ところが、その写真のひとつめのコメントを読んでもう一度その写真の題名を読み返した後、「ホーム・コーディネーター」の後ろに私の姉の頭文字「X」があること、つまりコーディネーターとは私たち「姉妹」の姉だということに気付いたのです。今、日本では「断捨離」という言葉が流行っていてそれをテーマにしたテレビ番組が高視聴率を上げているとのことで、姉と妹はお互いの家を行ったり来たりして、不用品の処分や家の中の棚おろしをしながら、それぞれにインテリア・コーディネートを楽しんでいる様子です。
 
 幼少時代から素直で従順な性格の妹が、玄関を開けるや否やぐるりと辺りを一瞥した姉が「これは、この棚の一段目。」「あれはこっちに動かせば?」などと親切に助言するのを「うんうん」と頷きながら、アドバイス通りに調度品を整えている姿が目に浮かび、思わず顔がほころんでしまいました。海を隔てて1万キロの大陸のはるか彼方にいながら、リアルタイムで妹が掲載する画像を見ることができるのが嬉しくて、ついついコメントの数が増えてしまいます。
 数日後、「コーディネーターが来る前にコーディネートしておかないと。」と示唆していたMちゃんの写真を見ながらコメント欄でやり取りを続けていた部屋に入って来た夫が、コンピューターに向かって一人くすくす笑っている私の背後で「ダイジョウブ?」と尋ねました。訳を話すと、夫は驚いたように少し頭をのけぞらせて「それで、Mちゃんは言われた通りに位置を変えるわけ?」と訊きました。私は「即座によ。ものの1分もたたないうちに。玄関の飾り棚のカエルの置物は、薔薇の花器の隣に移ったし、リースがあったところにはサボテンの寄せ植えの鉢が移って、しかも、それもすぐにバランスを整えるために2センチほど左側に動いて、鉢を眺めるキリン(の置物)も物悲しさを出すために5センチ移動。でも、演出のためにと花器の台に置いておいた4粒のちっちゃな石はYくんが、鉢の中からぽろぽろと落っこちてしまったのかと思ったのか片づけてくれたの。」と話して聞かせました。写真を見ながらしばらく耳を傾けていた夫が、急に押し黙って少し間をおいてから、若干咎めるような口調で「ところでね、君は、裏庭のホースの水を出しっぱなしにしたまま中に入って来ていたよ。それにカメラの蓋が外のテーブルに出しっぱなしだ。」と言いました。
 急いで外へ出てみると、私が芝生に放り出したまま水を出しっぱなしにしていたという黄色いホースは、きちんと巻かれてデッキの下の所定の場所に納まっていました。
 
 ハミングバードの連写に夢中になるあまりうっかりカメラの蓋を置き忘れたガラス張りのテーブルの前で裏庭をぐるりと見渡すと、去年フェンス沿いに移植したギボウシと芝生の間には雑草が伸び放題。薔薇とラベンダーの花壇でも、地獄の底から生えてきたのかと見紛うような摩訶不思議な茎の太い異様な植物がのさばっているではありませんか。私は我に返りました。非の打ちどころのないよそ様のお宅の調度品について「位置を左に2センチにずらす」とか「あれはガラスの器に入れたほうが」など「あーでねー」「こーでねー」的な意見を述べている暇があったら、ここからあそこまで25メートルの草取りだけでも、すぐさま開始したほうがよさそうです。
 
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