Just Say Yes

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雑感 ~ 大きなゴミ VS 小さなゴミ

 愛用のT社の2007年のハイブリッドカーの調子が落ちて来たのか、運転中にライトが点滅し始めたので、先週の水曜日にディーラーに持って行って点検してもらったところ、エンジン動力を電気に変換することができなくなったため、システムの効率が落ちているだけで、エンジン自体やほかのパーツには問題ないとのことだったので、いったん帰宅しました。ところが、やはり調子が悪いので再び見てもらうことになり、昨日から台車を使い始めました。
 
 昨夜、夫が、その台車を運転して仕事場にいた私を迎えに来た時、近所のハンバーガー屋さんで私のために買ってきたというスパイシーなチキンが入った袋が、運転席と助手席の間に置いてありました。ファーストフードのハンバーガーは、よほどのことがない限り自分の分を買うことはありませんが、このお店で数年前に売り出した1ドルメニューの中のこのスパイシーなチキンのサンドイッチは美味しいと思ったので、お腹がすいていれば注文することがあるからです。
 
 車内でサンドイッチをほおばりながら、「もし車を買い替える必要が出てきたら、こんな大きなバンだったら、犬も連れて一緒に西海岸まで横断できる!このタイプとか(私の右側を走行していた車を指しながら)あのランドローバー・レンジローバーとか。」と私が冗談を言うと、運転していた夫が、「このバンは、高速で1ガロンにつき約17マイルと燃費が悪いよ。長年愛用していたあの(去年の暮れに処分した4WD)ボクのベストフレンド並みだよ。大体レンジローバーなんか高過ぎる。F社の同じような形のでカッコいいのがあるんだよ。よくよく考えてから、燃費がよくて性能が高い車を選ばないとね。」と言いました。

  私も夫も、自分たちの持ち物は、物の方で「もうかんべんしてください。」という様相を見せ始めるようになるまで、何でもとことん使い切る方なので、過去に愛用した車はどれも「廃車」にせざるを得なくなるまで使いましたし、同様に、洗濯機も業者の方でも修理ができなくなったため2年ほど前に処分して以来、今年に入って我が家に仔犬が2匹やってくるまで家の中には置かずに、コインランドリーに通っていました。犬用のブランケットや足ふきマットなどを洗う必要がなければ、それで十分だったのです。
 

  同じ地球上に住んでいながら、洗濯機はおろか衣類や食糧や住居すら確保できず、病気に苦しみ、少量の食べ物を料理するコンロにさえ不自由している人々がいる一方で、豊かな国に住みながら大きな車に乗ったり便利な暮らしを支える大量の電化製品を所有し粗大ゴミを増やして二酸化炭素の放出にますます拍車をかけ、地球温暖化の要因をつくり悪影響を与えているのは、まさにこの自分なのだという罪悪感やジレンマに悩みながらも、私が使っていたコインランドリーで、馬用の2枚の「馬着」や少しガソリンの匂いがする真っ黒なドアマット等を洗濯しながら、「禁煙」のサインが表示されている横でたばこを吸っていた男性に向かって別のカスタマーが啖呵を切っている場面に遭遇して以来、熟慮した挙句、躊躇しながらも先月ようやく洗濯機の購入を決心してしまったのでした。

   夫が運転する車の中で、今年メインテナンスをしなくてはならないプール用のヒーターや、夏の一時帰国の計画などを話し合っていると、あっという間に家に着いてしまいました。
「持ち物が多いと、キープするにしても、捨てるにしても、とにかく余分なエネルギーがかかるね。」と言っていた父の言葉を思い出しながら着替えをしようと思って寝室のドアを開けた、その時です。
 
 数日前に、クローゼットの掃除を兼ねて衣類を整理し不用品を処分した時に、自分のクローゼットの中の衣類も片づけ始めた夫が出してくれ、捨てるに捨てられなくて部屋の隅の肘掛椅子に放り出してしまっていたショートパンツが目に入りました。

 「これはK(娘)が13年前に着ていた物でよれよれだし、もう雑巾にしても良いくらいだから。。。」などとぶつぶつ呟きながら、パジャマとして使っていた息子たちのトレーナーや娘のパジャマなどを整理しているのを見ていた夫に「久しぶりに新しいパジャマを買った方がいいと思う?」と訊くと、夫は、自分用のクローゼットのドアを開け、「Mちゃんが履けるような短パンが確かあったよ。」と言って、サイズが合わなくなって履けなくなったという短パンを、にこやかに「これはどう?」「これはどう?」と言いながら、次々と自分の箪笥の中から取り出して、私の面前に広げて見せてくれたのです。
 
 私は、自分が家の中でこれらの短パンを履いている姿を想像してみました。

 以前、長男の親友が泊まりに来た時、次男が小学生のころに愛用していた、サッカーボールを追っている男の人の赤と黒のシルエットと青いボールが全体に散りばめられたデザインの、ヨレヨレのフランネルのパジャマ姿のままでうっかり寝室から出て行ってしまい、ピアノを弾いていた長男と談笑していたTくんに「ハロー。」とあいさつした際に、その場で夫に「くれぐれも、この家に住んでいない人の声が聞こえたら、そんな恰好でリビングルームに出てこない方がいいよ。」と窘められ、私の容姿に関する彼の意見や感想など求めてもいないのに、T君からも「いやいや、もっとひどい姿の女性も見かけたことがあるんでね。気にしないで!」と慰められた日の事を思い出しました。
 
  大体、1枚目は、どう見てもぶかぶか。男性のLサイズ(注:アメリカのLサイズ)の上、ゴムが伸び切っている感があります。

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 2枚目は、「12歳・14歳の少年用」。一体全体、なぜこんな代物が夫の箪笥の中に紛れ込んでいるのか甚だ疑問。

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 3枚目。ペンキの模様のおまけ付き。確かに、2週間前まで数日間、徹夜で自宅の2階のスタジオのペンキ塗りに励んでいた時に、お気に入りの洋服が全てペンキだらけになってしまったことを全く気にしていなかったので、夫は、私だったら履くだろうとでも思っているのでしょう。これは、その時一緒にペンキ塗りをしていた次男が履いていたものだったのです。いくらパジャマとは言え、そんな短パンを履いてリビングルームに出て行った暁には、時々ひょっこり顔を見せるTくんが卒倒してしまうかもしれません。

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 そんなこんなで、これらの短パンは、寝室の隅の肘掛椅子に放り出して、私の箪笥に戻すのかゴミに出すのか、もう一晩じっくり考えたいと思います。

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不思議の家の物語 2.

 

 例年になく気ぜわしく過ごした感の残る2014年でしたが、年が明け、平穏なお正月を迎えて数日が過ぎたある夜のことでした。
 一段落ついたので仕事部屋からリビングルームへ続くドアを開けるや否や、唖然として立ち尽くしてしまいました。
 これほど驚いたのは、クリスマスの直前に夫が私を喜ばせようとして、我が家の外壁にスポットライトをあてるために内緒で購入してきて、玄関前に設置してくれた意味深な「赤と緑のクリスマス・ライト」を見て以来です。
 
 街中が、クリスマスのイルミネーションでゴージャスに輝く中、カントリーサイドにぽつりぽつりと建つ近隣の家々の中で、二酸化炭素の排出量の削減に貢献すべく電球形蛍光灯3個のみで家の外壁を照らしているのは我が家だけ。
 ご近所の庭先には、新年が明けて1週間経つ今でも煌々とイルミネーションが輝いていますが、家の内外を飾ることを好まない夫は、夜になると信号機よろしく(日本語の場合は「赤」と「青」と表現しますが、英語では「青」でなく「緑(グリーン)」です。)不可思議な光を発光している(実物の信号機と異なる点は、「赤」と「緑」が同時につく点です。)3つの電球も、年明け早々に片づけ始めていました。 
 
 7、8年も前になるでしょうか ― 玄関のドアをペンキで風変りな明るい色彩の緑色に塗ってしまった際に、ご近所の奥様に言われた台詞を思い出しながら、きっと彼女も私と同様、今頃、我が家の庭から信号機ライトがなくなったことに、ほっと胸をなでおろしているに違いないと思ったのも束の間、リビングルームの隅の小ざっぱりと片づいた机の上に異様な空気を醸し出す赤ランプを満足そうに眺めながら、夫は、「何だか雰囲気良いね。」と同意を求めてきます。

 ― 雰囲気が良い?

 ごてごてと飾るのが趣味ではないと豪語する夫の、このお茶の間の空間の演出の美的センスに度胆を抜かれ、閉口したまま「あのライトはいつまであそこで輝き続けるのだろう。電球形蛍光灯は1、2年は持つんじゃなかったっけ?」などと思いを巡らせながらリビングルームを出て仕事部屋のドアをぴしゃりと閉めると、私は、雑音が一切封鎖された状態になるようにしっかりとイヤフォンを付けて、小澤征爾さんが指揮するスイスの「小澤征爾インターナショナル・アカデミー」の皆さんが奏でる「弦楽セレナーデ」を聴き始めました。そして、再びコンピューターの画面とにらめっこしていると、夫が部屋に入ってきました。
 スクリーンから目を離さずに、左耳からイヤフォンを外して右耳だけで曲を聴きながら私が呟いた小言を聞いた夫は「え?いま、誰の奥さんになりたかった、って言った?」と訊き返しました。
 「『チャイコフスキーが生きていたら、絶対に彼と結婚していたと思う。とても気が合いそうだし。1600年代だったらバッハだけど。』と言ったの。」と繰り返すと、夫は、蔑むようにくっくっくっと笑い、「君は一言もロシア語が話せないんじゃないのかい。何かロシア語で言える?例えば『ハロー』とか?」と訊きました。
 言われてみると、「ハロー・・・?『ハロー』は言えない。」けれど「一言も言えないわけでもないのよ。『マトリョーシカ』は言えるし。」と小声で抗議はしたものの「さて、人様の美的感覚を語る前に、自分の才能は?」と思ったところで急に我に返り、左耳にもしっかりとイヤフォンを固定すると、現実と向き合うべく、再びコンピューターの画面に視線を落とすのでした。

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